BIGNAMEのエトセトラ

震災後、被災地にはたくさんの建築家がきました。
建築家による復興支援ネットワークアーキエイドも立ちあがり
様々な地域で色々な形で、復興に協力しています。
すごい世界的ビッグネームが並んでいます。

これは建築家たちの「何か力になりたい」という気持ちの表れなのでしょう。
地域にとっても、「新たな街」というものを考えるときに
幅広い選択肢を考慮することが可能になるでしょうし、
また、気にしてくれる人がいるという、そのこと自体も心強いものだと思います。
これ自体は素晴らしいことだと思っています。

ただ、どのような経緯で、参入する場所を決めたのだろう、と
ちょっとだけ、あくまで個人的に気になっています。

東松島市の場合、宮戸島にSANAAが入っています。
東松島市全体ではなく、基本的には宮戸のみのようです。何故、限定的なのか。
では、野蒜地区や、矢本地区などに誰かが入っているかと言うと、
少なくともそのようなビッグネームは入っていません。

もしかしたら、住民、あるいは自治体の意向によってそうなったのかもしれません。

しかし、どうしても、「島」という空間が選ばれたのではないか、と邪推してしまいます。

もちろん、東松島市、あるいは野蒜を含む旧鳴瀬地区が、今後観光面を更に強化していく、
その戦略において、意識的にSANAAの建築群を利用するのであれば、それは良いと思うのです。
建築家たちが「魅力的な仕事の場」として、地域を限定的に選んだということでなければ。

仙台のメディアテークは、完成から10年が経っても、今でも見学に来る人々がいます。
魅力的な建築物というのは、1つの観光のコンテンツとしては優良だと思います。
鳴瀬地区が、歴史や自然という素材を活かしていくために、うまくはまれば効果的だとも思います。

だから、いつものような真っ白とガラスの建物で、
あっという間に薄汚れてましたなんてことになりませんように。
海辺という環境をきちんと把握していただきますように。
銀山温泉における隈研吾氏設計のホテル藤屋等を思う時、どうしても不安になります。

雑誌「世界」9月号で隈氏と伊東豊雄氏の対談を読み、
そして豊雄氏のプロジェクト「みんなの家」が、まさに住民の希望を活かして造られている
(豊雄氏のテイストがほとんどないと見える)ところを見ている限りは
このような不安は杞憂であると思います。そして、そう願います。